食満伊…未満です。
過去の捏造しまくってます。
食満が元い組です。
善法寺の両親は亡くなっています。
い組…成績優秀、オールマイティ
ろ組…力がすごいやつ
は組…知識や特殊芸に秀でてるやつ
だと思ってます。
五年進級時にい組からは組になった時、最初、食満は大層ショックを受けた。
実技は潮江と張れるくらい優秀だったはずだ。筆記もそこまで悪かった記憶はない。
潮江には及ばなかったかもしれないが。
(潮江は意外と頭が良くて、筆記が得意なのが、悔しい)
一年の頃からの、い組としてのプライドはそれなりにある。
筆記は苦手だったが、い組に在籍するために頑張った。
とうとう努力じゃ追いつかなくなってしまったのか。
だとしても、せめてろ組だろう。武道には自信がある。
それすらも評価されなくなってしまったのか。
まぁ、落第した奴が沢山いる中で贅沢かもしれないが。
組の編成も、だいぶ小規模になった。
狭き門をくぐり抜けたのは分かっている。
だが、落ち込むことには変わりはない。
成績優秀軍団は、あくまでもい組なのだから。
ただ、同室になったのが、知らない奴ではなく善法寺伊作だったことは救いだった。
彼とはクラスこそ違うものの、三年からの付き合いだ。
潮江と大喧嘩のち大怪我した時に保健委員として治療してもらったのがそもそもの出会いだった。
「すげぇ!」
「おぉ!」
満身創痍の悪餓鬼二人は感嘆した。
それほど、同学年の保健委員が施した治療は完璧だった。
新野先生の留守を若干13才で全任された善法寺の腕前は、たいしたものだ。
元気になるやいなや、潮江は善法寺に礼を言うとギンギン飛び出して行った。
だが食満はその場を動かない。
善法寺は「おだいじに」
を言ってさよならする準備が出来ていたので、少し戸惑った。
食満が何か口にしようと思った時、善法寺はひらめいた顔をした。
「あ」
「?」
「お茶飲みたいの?」
保健室に常備してあるお茶には定評があるのである。
暖かいお茶を啜りながら、「熱っ」
という声を聞いた。自分で淹れたのに。
善法寺は少し頭が悪いのかもしれない。
一方食満は湯飲みに入ったお茶を、美味しく頂いた。
うまい。
保健委員は皆美味しくお茶を淹れるのだろうか。
「おかわりいる?」
食満は頷いたが、お茶を飲みに来た訳ではなかった。
「俺はい組の食満留三郎」
「うん、知ってるよ。一年の時から良く来てたよね。私は善法寺伊作」
「知ってる。」
「だろうね。不運小僧で有名だろ?」
伊作はふわりと笑った。
あだ名は当然悪い意味で、笑っていうような事ではあまりない。
人柄や、保健委員で世話になることもあり、彼には友人はいた。
だが、い組を中心に、嘲る人間も多数いた。
そんな連中にもしっかり治療を施すのが伊作の人柄だった。
食満は伊作のことは良く知らない。
ただ不運でドジで、試験の時に必ず体調を崩すが進級出来ているのは不思議だと思っているくらいだ。
「お前、忍者に向いてないって言われないか」
「あぁ、よく言われる」
「いいのか」
「いいって、何が?」
「卒業したら忍者になるんだぞ。それでいいのか」
「もちろん」
意外にも善法寺は即答した。そして、食満を見据えて続ける。
「私の成績じゃ独立した忍者にはなれない。だから違うことをする」
意思は固いのだろう。
食満は、自らのそれとは違う、丸くて大きな目をみて思った。
だから踏み込めなかった。
きれいな笑顔を浮かべる目の前の少年を、自分よりも大きな精神体と見なして、畏縮したのかと、今になって思う。
年相応ではない、かといって先輩や先生とは異なる“大人”を感じていた。
「保健委員皆が」
「?」
「その…お前みたいなのか」
「違うよ」
善法寺はいつも柔らかく笑う。食満は何故か安心した。
「私には小さい時からお手本がいたからね」
あぁ、治療の話か。
「親が医者なのか」
「育ての親が住職なんだ。戦争で傷ついた人を治療してた」
育ての親。
「実の親は疫病で死んだよ。運よく引き取ってもらったんだ。じゃなけりゃその変でとっとと死んでた」
ほんと幸運だったよ。
不運な善法寺は幸せそうに、過去を振り返った。
それ以来、食満は善法寺に興味をもった。
未知のものに対する自然な興味だ。
だから、という訳ではないが、よく怪我もしたし、保健室に訪れた。
柔らかなものを纏う善法寺伊作という人物を見極めようと必死だった。
善法寺は、普段は年相応の子供らしかった。
よく笑いたまに泣いた。そして甘味を好んだ。
ただ不運…というか大概は本人の不注意だったが。
すでに親友となっていた食満は、よく世話をした。
何故か善法寺を手当する機会も多かった。自然、治療の腕もあがった。
伊作は皆が持っていない何かを持っている。
食満は確信を持つようになった。その何かを、着実に自分も身につけていることに、彼自身は気づいていない。
善法寺には、彼がは組に来た理由が、実はよく分かっている。
「留さん?」
引越し準備のような荷物を引っ提げて来た善法寺は、部屋の前でにっこり笑って立っていた。
骸骨やら何やら不穏なものが飛び出した荷物にチラッと目をやった食満の眉間が歪む前に、善法寺がそのきれいな笑顔で、
「不運移しちゃうかもしれないけど、よろしく」
手を差し出してきたもんだから、食満はつい握ってしまった。
それから、食満も、善法寺と同じくらいきれいな笑顔を浮かべた。
い組に対する執着は、握手が浄化してくれた。
今では、善法寺が五年まで進級できた理由がよく分かる。
気がする。
同学年には分からない善法寺の何かを、教師たちはしっかり見ているんだろう。
ただのドジで報われない不運委員長の、精神の深淵が見えているんだろう。
善法寺と同じくらい、自分も見られていることに、食満はしばらく気づかない。
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あんだけ不運を受け入れる伊作は尋常じゃない!ってことで尋常じゃなくしてしまいました。
伊作の幸せな家族ってのが想像できません。ごめんね。
食満くんはろ組でも良さそうなんですけど、は組なんですよねー…
彼の保父さん的な包容力は伊作の影響で貰ってたりして なんていう妄想。